八ヶ岳の森には、どんな獣がいるのだろう?
そんな興味を持ち始めたのは、高校生の時でした。きっかけはレイチェル・カーソンの本でした。それまで、八ヶ岳登山は学校の行事として参加しただけ、森に入ったのも下草刈りや燃料の薪を取るという目的だけだったのです。米作りの手伝いでも、たくさんの農薬と化学肥料を使い、その事に何の疑問も無かったのです。
しかし、カーソンに出会ってからは「自然の中のつながり」ということに興味を持つようになり、八ヶ岳の森を見上げては「いったい自分とどうつながっているのだろう」という疑問とともに、森を歩くようになりました。
そんな中で、今まで気がつかなかった獣たちのフィールドサインと沢山出会うようになり、「この森にはどんな獣がいるのだろう」とますます森を徘徊するようになりました。 カモシカと最初に出会ったのは、地獄谷林道の奥に入った時でした。突然、谷側から林道に現れた彼?と出会ったときは、感動のあまり手を合わせていました。森の仙人がまるでカモシカになったような風貌、しばらくお互いににらめっこになりましたが、「何しに来たんだ」と心に問いかけがありました。私は思わず「あなたに会いに来たのです」と答えてしまいました。
八ヶ岳の森では、観音平付近をはじめカモシカに会う確率は少なくありませんが、ニホンジカほどではありません。なにしろ、彼らは 日本固有のウシの仲間であり、現在は特別天然記念物なのです。しかし、八ヶ岳の森の人工林化と林業の害獣として駆除されたことにより、レッドデーターブックでは準危急種として扱われています。
ところが、最近では、八ヶ岳横断道路よりずっと南側の標高700mの付近での目撃情報を聞くようになりました。高根町の上黒沢では、クマと間違え(カモシカには「1本角」がありますよ)警察沙汰になったようです。長坂町の中丸では、親子のカモシカを見たという話も聞きました。よほど山奥が住みづらくなったのか、数が増えているのか、彼らの方から人間との共生を求めて里地に住み始めたのか、戻っているのか。
よく、ニホンジカとカモシカの違いを聞かれます。姿を見れば一目瞭然なのですが、カモシカの角は雌雄ともに枝分かれしません。彼らはウシ科の動物でシカ科に属するニホンジカとは生態的や形態的に異なる点が多いようです。一方、ニホンジカの雄は優雅な形の角を持ち、角が毎年生え替わります。ですから牧場の柵の付近でよく見つける角はニホンジカのものなのです。
食害が激しいと言うことで、3年前からその調査しているのですが、カモシカもニホンジカ同様上顎の門歯を欠くため、食痕の形態から彼らを区別することは無理だと分かりました。また、糞の形状もよく似ているため、これも識別のポイントにはならないようです。ただし、カモシカはほとんど樹皮菜食を行わないこと、単独性で雌雄とも縄張りをつくり特定の場所を頻繁に利用するため、一カ所に大量の糞が堆積する「ため糞」が出来ていることが分かりました。だいたい同じところで同じカモシカに会うのはそのせいでしょう。
そして、今年の春先気が付いたことなのですが、体毛の違いです。体毛の両端を指でつまんで曲げた時に、弾力性があって丸まるのはカモシカで、途中で折れてしまうのはシカの様なのです。シカの体毛の方が硬いせいだと思います。
もう一つのカモシカの特徴は、目の下にある大きな眼下線でしょうか。ここから出る分泌物を小枝の先などにこすりつけて臭いを付け、縄張りの誇示をしています。
先にも書いたとおり、カモシカはにらめっこをしてくれます。ですから、写真を撮ったり、野帳に顔をスケッチする事が比較的容易なのです。ただし、その間、心のアンテナを開き、テレパシーで会話していることが必要です。
カモシカの顔は、私たち人間の顔が一人一人違うように、一頭一頭違っています。角の曲がり具合や耳の形、顔の模様が微妙に違っていることに気づきます。カモシカ同士でケンカでもしたのか、角が折れていたり、耳が切れていることもあります。
前記したように、彼らは縄張りを持っていてだいたい同じ場所にいます。ですから、同じカモシカに会い、特徴をスケッチする事も可能なのです。カモシカは、外見でオスとメスを見分けるのは難しいのですが、子供を連れていたら、少なくともそれはメスのカモシカに違いありません。
そうやって、観察をしていると、そのカモシカの特徴が見えてきて、いつの間にか顔が見分けられる様になります。そうなったら、名前を付けるといいと思います。私は八ヶ岳の森で初めて出会ったカモシカに「仙人」と付けましたが、数年後から出会うことがなくなり、地獄谷林道では違うカモシカと出会うようになりました。そして、彼を「新仙人」と呼んでいます。
最初に識別できる特徴を発見した人に命名権があってもいいのではないでしょうか。出会ったときの感動や一番気が付いたことなど、思いついた名前を付けるといいと思います。
何度も通っている間に、もしかしたらカモシカがあなたの顔を覚えてくれるかもしれません。
心のアンテナを開いて、八ヶ岳の森からのメッセージを受け取りに出かけてみませんか。
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ヤブヘビイチゴ。ずっとヘビイチゴと思っていたら違っていた。食べてみると甘さは無いがジューシーだ。ワイルドストロベリーとも言うそうだ。
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