[北の大地へ] 1983夏

復刻その6・利尻夜間登山と礼文岳

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このコンテンツでは、Travel X-perience観光写真館設置に向けて、パフォーマンス評価を行うために、画像データを掲載しております。ポートレイト写真も掲載されていますが、プライバシーを考慮して、画質低下処置を行いました。
8/24(水曜)

今日も、文句無しの快晴。朝一の鴛泊行きフェリーに乗りこむ。8月も下旬なので、混雑はずいぶん緩和されている。ノシャップ岬を回ると、利尻富士が姿を現す。中腹に雲を纏い、見事な雄姿である。近付けば近付くほど、あまりの標高差に圧倒される。利尻登山は想像以上に難儀しそうだ。港に到着すると、利尻オシドマリYHの一団が、派手なお迎えパフォーマンスをやっている。「かっこいい奴」というタイトルのオリジナルソング(らしい)と踊りである。

鴛泊行きフェリー 利尻の山容

行動予定は、昼過ぎに出発、長官山の避難小屋で夕日を楽しみ仮眠、未明に山頂へ、である。港の近くの食堂で、登山情報をたずねてみると、「昼間登るのは暑過ぎるからやめときな。登るなら絶対、夜!」との回答だった。とはいえ、利尻は初めてだし単独だし、夜間登山はちょっとコワい。ならば、オシドマリYHの夜間登山(8時間コース)に乱入するのがベストだろうという結論になり、その出発時刻も教えてもらった。ちなみに、利尻島に熊はいないので、夜間でも安全だそうである。

午後、暇になったので、姫沼まで徒歩で往復する。考えていたよりも遠く、脇を走るダンプカーが不愉快で、しかも苦労の割には、逆光であまり良くなかった。沼の水も濁っているし期待外れといったところか。ペシ岬で夕日を楽しみ、食事。適当に時間を潰す。

姫沼 鴛泊港 鴛泊港から見上げる利尻富士 ペシ岬の夕日 ペシ岬の黄昏

21:30、出発時刻だ。 懐中電灯の灯りを頼りに、登山口まで車道を歩く。すぐに民家はなくなり、寂しい道となる。ただし、オシドマリYHの前だけは、妙に騒がしかった。

しばらく待機して、予定通りYHからの一行が現れたので、後に付いて歩き始める。 不意の飛び入りに驚いていたが、暖かく迎え入れてくれた一行に感謝である。 いよいよ登山の始まりだ。 甘露水を過ぎて、ポン山への分岐を見送ると、すぐに森林限界を越えた。 満月に映える利尻の山影、満天の星空、水平線の漁火。 一行のペースは想像以上に速く、ついて行くのがやっとだったが、おかげでぐんぐん高度を稼いでいく。
余談だが、オシドマリYHではオールナイトミーティングなるものをやっていて、 それが嫌で、夜間登山に参加したと言う人もいた(ならば泊まらなければ良いと思うでしょう。しかし旅行者の荷物を隠したり、行き先の宿に勝手にキャンセルの電話を入れるなど、強制的に連泊させるような行為が、日常的に行われていたらしい)。 結局、私はオシドマリYHを敬遠したので、実態は分からぬままになった。

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8/25(木曜)

いつしか日付は変わり、更に高度を稼ぐ。 満月に映し出される夜景は、これからの順調な山行を約束しているかのようだった。

ところが、一行のメンバーは何故か8号目(長官山)で引き返すのだと言う。なんでも、YHに関わる地元民(漁師だったか?)の言うことでは、天候が急変するのだそうな。メンバー達は、それを信じて疑わないし、私も予報をチェックしてなかったので、 何も言い返せず、適当にあいづちをうつしかなかった。しかし、相変わらず満天の星空、山頂上空にわずかに雲がかかり消える程度である。今後の行動を思案しつつ、8号目に到着(2:00ころだったか)。30分ほど休憩。

いよいよ決断の時は来た。

やはり快晴。どう見ても夜明けまでの数時間で天候悪化するとは考えられない。一行がフリーならば登頂を強く薦めるのだが、あくまでもYHからのツアーだし、勝手な予定変更はトラブルを引き起こす。もちろんメンバーにはお世話になったが、最後まで行動を共にする義務はないのだ。つまり、ここで引き返せるほど、私は人間が出来ていなかった。下山途中で雨になるなら、それも覚悟である。
(著者注釈:YHからのメンバーは、宿泊費を支払っていることを付け加えておく。)

私は行きます!!どうもありがとうございました。」と宣言し、単独でハイマツの道を歩き始める。 背後からの引き留めや、ブーイングの嵐を振り切って、再び急登に取り付く。 月の明りで視界は良く、もはや夜の恐さを全く感じない。 しばらくは、懐中電灯で一行に合図しながら進んでいたが、傾斜は更に急になり、よじ登るのがやっとになった。もはや「天候の急変」など頭からすっかり消えていた。ほどなく山頂、一番乗り。しばらくすると、単独の登山者や、利尻YHからの一行(3人だったが)がやってくる。

水平線の漁火が幻想的で、かすかに夜か白み始めた。 そして、空は茜色に染まり、御来光を堪能する。

夜景(鴛泊、礼文島、漁り火) 夜明け 夜明け 夜明け・北海道宗谷地方の地形を確認できる ご来光

360度、視界を遮るものは何もなく、足元は急峻な崖で、荒々しい沢がいくつも見える。 利尻は丸い島だと実感。 水平線には、樺太の山なみがかすかに浮かび、東の海上には何やら薄い膜のようなものが広がっている。よくよく見るとそれは、北海道宗谷地方だった。 兜沼や、ペンケトー・パンケトーに光がさす。 反対側に目を移すと、見事な影利尻が....

兜沼に陽光が差す 山頂からの眺望 影利尻 山頂にて、空には満月。ピンボケ失礼

感無量のひとときを過ごして、太陽が十分高くなってしまったので、ゆっくりと下山開始。真夜中では気付かなかった見事なお花畑を堪能し、急峻な尾根を慎重に下って長官山へ。利尻山頂の見事な山容を振り返る。朝一では霞みで見えにくかった礼文島が姿を現してきた。

山頂付近のお花畑 長官山からの利尻山頂 礼文島を望む

すれ違う登山者に挨拶を交わしながら、灼けつくような道をぐんぐん下る。 ふもとから1/3くらいのところで、普通の旅行者のような格好の若い女性2人組とすれ違ったが、彼女たちはどこまで行ったのだろうか。甘露水をガブ飲みし、昼頃には鴛泊へ下山完了。沓形の利尻YHに今日の宿をとることにした。早めに宿に入って、ゆっくり休養。夕日を楽しむ。

利尻夕景

ミーティングが終わり、さっさと寝ようと思い部屋にはいる。しかし、荷物だけ置かれた空きベッドが目立つ。彼らは、徹夜で「島一周完歩」に出かけたのだった。ところで、オシドマリYHで天候の急変を主張した地元民は、無事だったのかしらん。
(著者注釈:完歩とは読んで字のごとく、徒歩で島を1周することである。1周約50Km少々あり、所用時間は10時間くらいかかるようだ。筆者は未経験。)

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8/26(金曜)

昨日の疲れもあって、ゆっくりと起床。ある男性2人連れに、レンタカーに便乗して島内巡りをしませんか、との申し入れを受ける。確かに有り難い話で、バスで回るよりもお得なのだが、午後のフェリーで礼文島へ渡る予定だったので辞退した。結局、女性2人連れと話がついていたようなので、その方が彼らにとってもHAPPYだったに違いない。今日もよく晴れているが、利尻山周辺には結構雲が発生している。

午前中は暇なので、YHでレンタサイクルを調達し、島の南端まで足を伸ばしてみることにした。心地よい潮風を浴びながら、住居もまばらな国道を南下していく。海辺の道ながら、火山島の裾野ということもあり、意外にアップダウンがある。南端の仙法志で一服。ガイドブックによれば、岬には「水族館」なるものがあるようだが、岩場に何かコンクリートで固めたようなものがあるだけだ(事実上、何も無し)。更に鬼脇、オタドマリ沼を目指そうとするが走れど走れど到着せず、時間が無くなったので引き返してしまう。結局、筆者は利尻島一周(手段は問わず)を未だクリアしていない。途中、完歩中のヘルパーのお姉さんから預かったトレーナーを宿に届ける。

利尻、手前の丘陵は仙法志ポン山 利尻

路線バスで鴛泊港へ移動し、礼文島・香深へ向かう。「かっこいい奴」らのパフォーマンス隊(ヘルパーと連泊者)に見送られながら、利尻島に別れを告げる。山の中腹にはびっしりと雲がかかっていたが、島から遠ざかるに連れて山頂部が顔を出してきた。登山者は見事な雲海を堪能していることだろう。香深港から最北端の礼文町立船泊YHへ。この宿は夕食が豪華との評判だったが、期待してた以上である(西海岸にある某YHとの差は歴然)。トド島を望むロケーションは絶品で、夕焼けの美しさは現実離れして、思わず言葉を失う。

船泊の浜、河口の池 船泊の浜、河口の池

ミーティングは某YHには及ばないが、非常に賑やか&活発だ。いわゆる「8時間コース」以外にも「トド島ツアー」があり、これは体験しないわけにはいかない。が、明日は前回の旅では濃霧で何も見えなかった、スコトン岬−西上泊のコースをうろついてみることにした。

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8/27(土曜)

朝一番のバスでスコトン岬へ移動。もちろん8時間コースを歩くメンバーと同乗する。岬で記念撮影。天気も極上で、素晴らしい景色だ。須古頓小学校から鮑古丹に下ったあたりで一行を見送り、歩きのペースを落とす。海岸付近をうろうろしてみるが、あまり深入りできそうにないので、コースに戻ってゴロタ岬へひと登り。

8時間コースのメンバー トド島 左のピークはゴロタ岬 右の岩場はスコトン岬? ゴロタ岬直下の岩場、8時間コース外

頂上での眺めは、まさしく感無量で素晴らしいの一言に尽きる。高度感も凄まじくスリル満点で、どこまでも広がる水平線は地球の丸さを感じることができるほどだ。 ただし、お花畑は茶色く枯れた残骸が目立っていた。南方に利尻富士がはっきり見えるものの、逆光なので写真撮影は困難だった。拡大写真をご覧ください。

南方、ゴロタの浜、西上泊、利尻は確認不能 西方、ゴロタ岬 北方、スコトン岬 利尻富士

浜辺に下って前回同様、カニを堪能する。単調なコースになり流木などゴミも目立つが、水面には海藻が模様を作り出し、歩くに連れて変わる、海の表情を楽しむ。

ゴロタの浜、ピークはゴロタ岬 ゴロタの浜

浜辺のコースも終点が近づくと漁港などの人工物が現れて、岩場のある尾根が立ちふさがる。海中公園予定地に向かうには、これを高巻く。道を少し外れると、スリリングな展望ポイントあり。南国を思わせる海の色が見事。桃岩荘からのグループが追いついてきたので、道を譲る。

海中公園予定地 西上泊

道を下りきると西上泊。桃岩組みは既に出発し、ショップや休憩スペースも比較的閑散としている。とりあえず、岬の方に出てみる。岩礁と海の色の妙を間近に見ることができる。当時、ここは「海中公園予定地」と呼ばれていたが、いつしか「澄海岬」と名づけられた。

海中公園予定地 ゴロタ岬展望

今回は8時間コースを歩かないので、船泊へ向かうアスファルト道に入る。8時間コースは海岸から離れて山道に入るが、少し登ったあたりに絶好の展望ポイントがあるので、忘れずにチェックしておきたい。さて、船泊への道だが樹木のない熊笹の丘陵地帯を越えていく。日射を遮るものもなく、焼け焦げてしまいそうだった。

丘陵地帯 丘陵地帯、利尻山頂が覗く 丘陵地帯、謎の電柱群

夕方、利尻富士の絶好の展望ポイントである通称「自衛隊の山」に登ってみる。なにせ、この山はソ連からの侵略機や核弾頭を監視するためのレーダー施設があるわけだから、あまり情報がない、というかおおっぴらにされていない。適当に道らしいものを見つけ、登ってみるとレーダー施設のフェンスにたどり着くが、利尻方面の展望が開けない上に熊笹の中を薮こぎする羽目になる。施設の正門に回り込むと車道があり、展望は最高。礼文岳や久種湖、スコトン・ゴロタ岬も一望のもとである(なぜか写真を撮っていなかった)。

利尻遠望 利尻遠望

久種湖方向に、はっきりとした下山道があり、そこを下ると国道沿いの住宅地へ出た。ここは自衛隊関係の住居らしく、このトレイルが徒歩通勤ルートかもしれない。
夜のミーティングで、明日の「トド島ツアー」を申し込もうとしたが、船が出ないと言う(昨日はそんな事、一言も言ってなかったが)。なんでも、地元町内会の行事で、漁はお休みとか。どうしようもないので、さっさと寝る。

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8/28(日曜)

最北端牛乳 早起きして、久種湖近辺の牧場に「乳絞りツアー」。恐怖の「牛の尻尾」攻撃におびえながら、生牛乳を味わう。ここで摂れた牛乳は「最北端牛乳」として売られているので、ここにもハシゴする。いずれにせよ「トド島ツアー」はNGなので、それでは礼文岳に登ってみようと、話がまとまった。

朝食を済ませて、バスで内路へ。民家の裏手が登山口で、案内板がなければ見落としてしまいそうだ。樹林帯の中、緩めの登りが淡々と続き、森林限界を超えると山頂部の山塊が目前に迫る。急登になるが標高差は小さく、程なくクリア。360度、真っ青な海に囲まれ、眺望絶佳。北部の岬、そして南海上に浮かぶ利尻富士もバッチリ(写真ではイマイチだが)。

登山口 北方展望、左からゴロタ岬、トド島、金田岬 南方展望 山頂にて

大満足で下山し、船泊に戻って街ブラ&買い食いしたり、浜辺で遊んで時間潰し。

最北端の鯛焼き 船泊YHにて 船泊港にて

いよいよ「島抜け」だ。ちなみに「トド島ツアー」は連泊が必要だが、明日もここに泊まるのは日程的に無理と考え、諦める(後年、雪辱)。船泊発稚内行きフェリー(既に廃止)で出発。

利尻と自衛隊の山(右) 礼文島とトド島

礼文岳に同行した彼女たちも乗船したはずだが、姿を見ないなぁ、と思いつつ、デッキに出っ放しで利尻富士と去り行く礼文島を眺めていた。船はノシャップ岬を回り、視界も消えたので下船準備。ほどなく稚内入港。さあ下船、と思ったところで彼女たちが現れた。なんでも船員さんに誘われて、操舵輪を握らせてもらったり、色々案内してもらったとのこと。しかも、業務終了後に船内(フェリーのデッキ)で海鮮パーティあり、招待されているそうだ。「今夜の予定は?」「宗谷線に乗って、幌延で野宿。明日は羽幌線かな?」「じゃ、OKね。」ということで、私も「参加」に。思いもよらぬご馳走に、舌鼓。さんざん飲み食いして、彼女たちは退散(夜行だったかYH泊だったか??)。私は、船室に泊めてもらえることになった。何から何まで、本当にお世話になりました。

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8/29(月曜)

早朝に起床し、稚内駅へ。これまで見事な晴天続きだったが、今日は薄暗い曇り空。始発の列車で幌延に向かい、羽幌線に乗り換える。曇り空だが、利尻富士はくっきりと見えている。いつまでも、いつまでも見送り続ける利尻富士。霞に消えて見えなくなると、ひたすら単調な緩行列車の旅。散々時間がかかって留萌。この先は陸地の奥に入り、海も見えず輪を掛けて単調。札幌に着いたのは、もう暗くなりかけた頃。少し時間があったので、時計台の夜景を見に行く。

時計台の夜景 時計台の夜景、いづれも夜景だから撮影する気になったアングルである。昼は論外

函館行きの夜行列車に乗る。

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8/30(火曜)

早朝、函館着。霧も出て、今にも泣き出しそうな空模様だ。有名なトラピスト修道院に足を伸ばしてみる。観光的なものは何もなく、それゆえに固く閉ざされたゲートが俗世界との隔絶をひしひしと感じさせ、なんとも言えない荘厳さが漂っている。あとは函館の街ブラ。歩いて回れる部分は、一通りクリアしたつもり。立待岬をゴールとして、体育館のような谷地頭温泉で一風呂浴びる。旅の終わりを、夜景鑑賞で決めるつもりだったが、函館山は終日ガスに包まれ、全く見込みがない。夜行の青函連絡船に乗る。


8/31(水曜)

未明に青森着。大阪行きの列車に乗る。天気は良くなったが空気が澄んでいないので、「内地だなあ」と思う。ひたすら、ひたすら南下。夕方、大阪駅に降り立つと、この世のものとは思えない蒸し暑さに襲われ、ただ呆然とするのみ。こんな凄まじい気候の中で元気に歩き回る大勢の人々って、一体??とさえ思えてしまう。冷房の効いた列車に乗り換え、どうにかこの場をしのぐ。家までは、実はまだまだ遠い。

−完−




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