両生類生態図鑑

1.サンショウウオ類の生態

☆渓流性(流水性)の生息環境


 映像は九州山地南部の状況で、最大標高1200m程度の山地では、急傾斜の渓流が稜線近くまで存在する。比較的温暖な地域に見られる照葉樹と落葉広葉樹、スギ・ヒノキ植林の混交林で、渓流性サンショウウオが生息する代表的な植生環境の一つである。ここには西日本最大種のオオダイガハラサンショウウオに並ぶ大型種のベッコウサンショウウオ、タゴガエルが生息する。ここでは斜面の広い面積を殆ど管理されていないスギ・ヒノキ植林が占めているものの、胸高直径1m近い大木も目立つ点など、かつては余り人の手は入らなく、原生林的な状況が近年まで維持されたものと思われる。しかしながら、河床には多くの大岩石が転がり、土砂中に倒木も埋設されるなど、伐採と人工林化による影響を受け続けている。近年の改変はしばらく休止され、現在に至る。九州固有種を育むこの貴重な環境はこれまでの調査経験やデータ解析から近い将来、谷崩壊の危険が高いと予想されたため、数年間の継続調査及び隔年調査を行った。ここ数年の記録的集中豪雨により、予想通りこの箇所を含めて下流部の谷の多くの部分が崩落消滅し、かなりの景観が激変した。

 映像は四国山地最源流部の状況で稜線部に近いため、渓流の落差はかなり緩くなっている。比較的温暖な地域に見られる照葉樹と落葉広葉樹、スギ・ヒノキ植林に加えて標高が1500mを超えるため、モミなどの針葉樹が混じる混交林で占められる代表的な植生環境である。急傾斜の滝が連続する豪快な渓相はここよりもさらに下流で見られる。
こういった環境には渓流性サンショウウオの最大型種の一つであるオオダイガハラサンショウウオ(紀伊半島産とは別種)、小型ブチサンショウウオ、ハコネサンショウウオが生息しているほか、タゴガエルも多数見られる。この地点の現状は敗戦後の伐採と人工林化の影響をかなり受けているものの、本来の原生林的な様相も辛うじて残されており、その限られた、かつ安定した環境に強く依存し生存している。幸いこの地点はしばらく伐採など停止されているが、周辺部では森林作業も続いており、環境の不安定化の危険が迫っている。

 映像は近畿地方北部森林の状況である。アカマツ林及び落葉広葉樹林、スギ・ヒノキ植林との混交林が主な植生となっている。本来はアカマツ二次林などの落葉広葉樹林で占められたと考えられるが多くの場合、敗戦後の無秩序とも言える伐採と人工林化の影響を受け、人工林が主な構成樹種となった。スギ・ヒノキの人工林も直射日光を避け、冷涼な環境を維持するという機能面では必ずしも悪くはないが、腐植層が殆ど発達しない上、度重なる集中豪雨による林床土の流出で起きる森林の崩壊が起こり、最も重要な生息環境が脆弱となることは避けられない。従って将来的には生息環境の消滅による絶滅が予想される。ここにはかつて多数のヒダサンショウウオそれも花崗岩地帯特有の綺麗な模様のものとタゴガエル、魚類のナガレホトケドジョウが生息していたが源流域を横切る舗装林道開通後に更なる森林基盤の脆弱さが現れ(減水と下流部の高温・富栄養化)、近年生息数の減少が続いている。近年最も渓流性サンショウウオの生息状況を大きく影響を与えているものとして、産卵期前後の少雨と渇水状態を一変させる突然の豪雨が挙げられる。

渓流性(流水性)

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