烏帽子沢奥壁 南稜フランケ

メンバー:N藤(L)(他会)、A山(記)

 

南稜フランケ5ピッチ目。どんどんロープを伸ばすN籐さんの背中をみていろいろな思いが絡み合う。「うう。。ランナウトして10mやんか。」

悪いことしか思いつかない。「今スリップしたらどないしよう。俺のところまで落ちてくるやん。それで止まればいいけど、途中のピン大丈夫かなあ。それよりビレイステーションだいじょうぶかなあ。」

しょうもないことが頭をよぎる。「やっぱテンションかかる前にはロープを巻き取ったほうがええんかなあ。でも巻き取ってた時に衝撃きたらとめられへんやん。」

そのうち声がかかる。「ビレイ解除!」あーよかった。南稜フランケはこの連続だった。

 

南稜フランケ。ルートグレード5級下。最高ピッチグレードXプラス。短いのに高グレード。密かに目標にしていたルートである。それにN籐さんから行こうとお声がかかる。即決GOである。

 

1ピッチ目。N籐さんリード。Wプラス。

鎌形ハング右端の下にビレイポイントがある。ボルト2本。しかし次のピンは?かろうじて5m先に1本確認。

リードはN籐さんにお任せした。朝の1ピッチ目はいつも緊張する。自分が持参したトポでは3ピッチ目も4ピッチ目もX+だったのでどっちでもいいと思った。緊張して喘息が出たのか咳が止まらない。だいたいいつもこうだ。

リードは空身で行くことにして、ザックを一個残置。これは本当にナイス判断だったことが後でわかる。

「お願いします。」「はい。ガンバです。」というような会話をたぶんした。でも緊張でおぼえていない。N籐さん登り始める。見えていたピンは浅うち。N籐さんは「これじゃ駄目だ」と無視する。精神力の強い人だ。感心する。カンテを越え、見えなくなる。見えなくなると何故か他人事。「カンテのむこうにはピンがあるだろう。」安易である。

 

フォローする。ピンが全然ない。「あひょー。」日本語だかなんだかわからない言葉が頭をよぎる。「聞いてないよー」アタリマエである。

 

2ピッチ目。A山リード。Wプラス。「こいつあ、たまらん」とハンマーをいつでも出せるようにしてリードする。案の定、5mしてもピンがない。このままじゃ墜落係数2やんけ!行き詰る前にピンを打たねば。

行き詰って落ちて骨折したことが忘れられない私は必死でリスを探す。カムやナッツを決められるクラックはない。フェースだからだ。でも、ちょっとしたバンドの根本には探せばリスがある。割れ目探しに必死になる。打つ。必死になっていると、その分リスも的確に見つかる。集中力が違うんだろう。結局このピッチ、2本のハーケン。1本の木。一本のリングボルト。1つのカムでしのぐ。

 

3ピッチ目。N籐さんリード。Xプラス。

核心部である。出だしのハングを右に越える。越えてしまえばN籐さんの姿は見えない。いきなり安易になる。「大丈夫。核心部にピンがないわけない。」

N籐さんのうめき声が聞こえる。「uu〜」「ug〜」「gg〜」これも日本語ではない。宇宙語だ。緊張感はいやがおうにも高まるが、やはり安易だ。「ピンあるし落ちても大丈夫だろう」

フォローする。ハングにはピンがある。それを越えたら。。。。ない。全然ない。N籐さんこんなところ登ってたのか。愕然とする。

ムーブ的には5.9くらいだが、ムリヤリたとえると小川山ストーリーより小さめ、かつゆるいホールドで20mランナウトする感覚だ。小川山ストーリーならたぶんその間に6本はボルトがあるだろう。それもペツルの

(ちなみにN籐さんは気付かなかったかも しれないが、あと2本はピンありました。それでも少ないことには変わりなし。)

ビレイ点に着く。「怒涛のランナウトじゃないですか!」「いやあ 本当に登れてよかったです。」というような会話をしたと思う。でも次は自分の責任ピッチ。ルートを探す。

4ピッチ目。A山リード。X。

まずは左上。その先ピンは期待できないので安定しているところに一本うつ。ちょっとエクスパンディングだったので、手前で止める。

カンテを乗り越す。ルートを見極める。右上のクラックにシュリンゲがぶら下がっている。でも見るからに脆い。でもそこが一番良さそう。腐ったピンがある。突っ込む。

ひいひい言いながら登る。「こいつ危ないなあ。浮いてるかも。」とつかんだホールドに体重かけた瞬間、ずぼっと抜ける。「ラクー!」「ラクー!」N籐さんが叫ぶ。コッチは叫ぶ余裕もない。「危ない」と思っていた分、足に体重が残っていたのでなんとか落ちるのは避けられた。ようやく乗っ越す。

そこにリングボルト発見。心のよりどころである。でも本当は下にほしかった。

その上はもっとぼろぼろ。岩が積み重なったかんじ。直上は無理なので、左下にトラバース開始。足を置いても大丈夫なのかはわからない。置いた足の下で石がもぞもぞ動く。でもなんとかなった。その上でもう一本ハーケンをうち、ビレイポイントへ。

ついた瞬間声が出る。「あ”ーー。恐かったーー」誰かに伝えたかった。心の声である。

 

その後雨で小休止。登ってきたN籐さんが「雨だからここから降りましょう」と言ったらどうしようと考えていた。ここが宿題になったらまた来ないといけない。でもこんなところ二度と来たくない。もし「降りる」といわれたら次のピッチをリードしよう。どうせあと1ピッチ半だから。後で聞いたらN籐さんも同じ事を考えていたらしい。

 

5ピッチ目。N籐さんリード。Xマイナス。

6ピッチ目。A山リード。V。

 

南稜に出て、見たことのある馬の背についたとたん心から喜んだ。「N籐さん!南稜にでました!」そのときの声はたぶん晴れやかだっただろう。

今回目標のルートをオールフリーで行くことができました。これはなには無くともN籐さんのお陰であり、谷川を企画していただいたN島さん、一緒に登った皆さんのおかげです。これからも安全登山を第一に精進していきますのでよろしくお願いします。(A山)