<RP記>不動岩・ラストコンサート(11b)RP

 

寒い。とにかく寒い。

カチを持つと、指先の血行が悪くなるからか、気温以上に冷たく感じる。

 

不動は冬がシーズンという人もいる。でもカチを持っているんだか持っていないんだかわからなくなるような季節はイヤだ。

 

ある暖かい日にMCの岩場に行ってみた。1月11日である。

私的にはすっきりとしたフェースなので、10cあたりをオンサイトするつもりで。

しかしオンサイトはできなかった。とにかく冷たいのだ。

登りながら指を口の中に含ませて息を吹きつける。

まさに血の気を通わせるために息を吹き込む。

なんとか2撃でRPしたものの、となりの11aのルートは苔むしていて取り付く気にならない。

おまけにS山さんからは「あんな怖いところよく行くわ」と落石の危険のためにリボルトされていないことを強調される。

 

どこをトライするか。

正面壁ではH本さんが小熊にトライ中。

はねかえされてもはねかえされても向かっていく。

下部のスラブは苦手系であるのに。

その姿を見ると自分のモチの低さがいやになってくる。

ビレイしながらも、どこか目標にすえたいと思う日々。

 

一度M本さんのビレイをしたあと、トップロープでウリウリをトライした。

実に良いルートである。やってみたいと思った。

でも4月に転勤の内示を受けている身。

ウリウリにとりかかるとそれまでに落とせないかもしれない。

思い切りがつかない。

 

そんなとき、冬の西陽が後まで当たっている岩を見つけた。

西壁である。

冬の日、東壁は午後になると真っ先に冷たくなる。

正面壁は南向きだか、リトルボーイがまず暗くなり、最後まで陽があたっているのはミート&ポテト。

それと同じくらい陽が当たっている。 

グレードも11bとトライ範疇。

西壁のルートのなかでもアプローチに難がなく、ビレイヤーに苦労をかけることも無い。

さっさか登って、そのあとはビレイヤーのためにフィックス張ってちょっとかぶりん、ダンシングシバとか夕凪をトライしよう。

という安易な予定で取り付き始めた。

 

予定は未定であって、とかく狂うもの。

既にトライし始めてから2ケ月。

転勤のタイムリミットは迫る。

本当は今のうちに関西の他の岩場を行きたいのだがそれができない。

とにかくRPするしかない。

 

相棒のH本さんは小熊を完登した。

最終クリップ後、足がすべってヒヤリとした。

しかし本人はそれを意とも介さない。終了点向かって突き進む。

見ているもの全員息を呑んだ。

冬空に「テンション!」の声が響いた。

心が折れない瞬間を見た気がした。 

2月22日のことである。

 

既にカレンダーは3月。

まだRPできない。

原因を考えた。

まずムーブは・・・できあがっている。

手順は・・・ホールドは覚えた。

足順は・・・場所は把握済み。落ち着いて足を見る。これしかない。

他にもいろいろ考えた。

 

一番の問題はヌンチャクの位置である。

ボルトの位置が悪く、非常にギリギリの体制でクリップしないといけないところ。そこにアルパインヌンチャクを長くしたもので一歩下からかけてトライしていたが、どうしてもカラビナがぶらぶらして安定せずクリップに手間取る。そして力尽きるパターン。

 

3月7日の夜。

そこにはフリーヌンチャクを二本がけにしたらよいのだと思いついた。

そこからは休めないので、突っ込むしかない。

5手先にはしっかりかかるホールドがある。

その上に前から気になっていたボルトがある。

図式が組みあがってきた。

二本がけで突っ込んで、そのボルトのヌンチャクにクリップである。

 

そして3月8日。

雨の翌日である。

いつものアップルートである隣のタイム・ハズ・カム10aをウエスを持って登る。

降りながらガバに溜まる水を吸い取る。

スメアをする所の湿り気も吸い取る。

幸い陽が照ってきたので、ある程度拭いたらお日様が乾かしてくれそうである。

そして歯ブラシでキーホールドに磨きをかける。ゴシゴシ、ごしごし。

 

ヌンチャクもかける。

やりかたは昨晩頭のなかで出来上がっているのでそのとおりにするだけ。

 

今日はS山さんのビレイだ。

つい先ほど腰を痛めてご自分は登るのをやめておくとのこと。

そんななかつき合わせてしまって申し訳ない気持ちで一杯。

そんな私の気持ちは関係なく、S山さんはいつものとおり明るく「ビレイはまかせて!RPしてや!」

その期待に応えたいのだが。。。

 

そしてトライ開始。

 

1撃目

二本がけヌンチャクにうまくクリップできる。

体力、指力が消耗しないばかりか、それだけで精神的に楽である。

「これはいけるぞ」と思う。

足を慎重に進める。

そして5手目のホールド。。。。取れない!墜ちた!

いままでで一番動きがスムーズ。

二本がけのところで多少ランナウトする分、下のテラスに接触するというおそれもあったものの、それもないようだ。

次に賭けよう。

 

2撃目

二本がけヌンチャクにうまくクリップできない。

クリップして力尽きる。

だめ。全然だめ。

クリップするときに左足があがっていない。

ハイステップ気味のところに自信がもてない。

 

降りてH本さんにメールする。

今日、彼は家庭の用事で来ていない。

「まだまだ!」と返信が来る。

 

3撃目

1撃目と同じ。

ラストホールドが遠い。

 

またH本さんにメールする。

「今日も駄目かもしれない」

「まだ時間はある。折れない心でガンバ!」と返信。

 

4撃目

「折れるものか、折れるものか」とホールドをわたっていく。

「いける。いける。」と足をさばいていく。

最後のホールドが近くなる。

「うおあーっ」と声がでる。遂につかんだ。最後のクリップ。

精神的には安堵するものの、決して休めるようなところではない。

あとは右でのサイコロのようなカチと左手で懸垂だ。

少しでも楽になれないか、右足を探る。

なにかひっかかった。次の瞬間懸垂を始める。

再び声が出る。

左足をスメア。

トップのカチを取る。

もう一回左足をスメア。

 

そのとき、終了点が目の前にあった。

 

追加)

ラストコンサートの限定について

上の方でカンテ上にあるホールド使用は不可。

フェース部分にあるカチ。穴は使用可。

ボルトからの遠さを考えて使えるホールドを考えるのが正直言ってウザイ。