
No.363 上野原から秋山二十六夜山
(歩程約2時間50分 ランクB1)
秋山二十六夜山(972m)は秋山川の南側にあり山梨県の東端で神奈川県と接しています。
鄙びた山村の風情を残す秋山川沿いにひっそりと聳えています。昔ながらの峠を越えていく、
心に染み入る山歩きです。

上野原駅から無生野行のバスは、われわれだけでほぼ満員だ。バスは峠を越え秋山川を遡り、小さな集落をいくつも通り過ぎていく。
登山口の浜沢で下車、キャンプ場を抜けると急な登りがつづく。30分ほどで休憩舎についたが、もう汗でビッショリ。ときどき傾斜は緩むものの、赤鞍ヶ岳分岐の明星平までは気が抜けない。
登りついた山頂はミズナラ、クヌギやヒノキなどに囲まれ、三等三角点がポッンと立っていた。涼しい風が吹きぬけ、今までの暑さがウソのようだ。タップリと休憩をとり山頂を後にする。

すこし下ると小さな広場の片隅に、この山の名の由来である二十六夜塔が建つている。江戸時代には旧暦の一月と七月の二十六日の夜、月の出るのを待って拝む行事を二十六夜待ちといった。夜半すぎにでる月の光の中に、阿弥陀如来・聖観音・勢至菩薩の三尊の姿が見えるといわれ、これを拝むと幸せが得られるという信仰があった。
信仰を口実に月の出を待ちながら飲んだり、食べたりして楽しむ庶民のささやかな行事だったのだろう。この山の中に二十六夜塔があるということは、ここまで登って月待ちをしていたのだろうか。

沢沿いの山道にはマムシソウの実が赤く色づきはじめ、ヤマユリが強い香りを放っていた。バスが来るまでしばらく時間があったので風の通る日陰で一休み。

下尾崎のバス停から無人のバス乗る。ドライバーは愉快な人で、他のお客さんは乗らないだろうから、貸し切りのつもりで、歌でも唄ってのんびりしてくださいと冗談を言うほどお客がない。
暑さに悩まされたが、ひとりの登山者にも会わない静かな山歩きだった。

平成20年7月20日
(文、写真:小林利秋)