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*bR41* 扇沢から鹿島槍ヶ岳

―後立山連峰の盟主・鹿島槍ヶ岳に登る―
           (歩程約14時間30分 ランクC2)マップ

鹿島槍ヶ岳は(2889m)は美しい双耳峰で、
左に爺ヶ岳、右に五竜を従えた安曇野の名峰です。

鹿島槍ヶ岳
(青木湖上空より、カシミール3Dで作成)
  

 8月3日(金)曇
 台風5号が九州に上陸し日本海を北上するという波乱含みの天候の中で「扇沢から鹿島槍ケ岳」の山旅が始まった。
 27名を乗せた貸し切バスは、八王子ICから中央高速道に入り快調にスピードを上げていくが、車窓から見る空は雲が厚く、車内の雰囲気はなんとなく重い。
豊科ICから青田の広がる安曇野に入っても、北アルプス連峰はまったく雲の中である。それでも大町アルペンルートから扇沢の登山口につく頃は雲の切れ間もではじめ、見上げる稜線にこれから登る種池山荘が見えた。

 種池小屋の主人が昭和30年代の後半から42年にかけて、自らツルハシやスコップを手に持ち、独力で開いたという柏原新道を登りはじめる。登山口の標高は約1350m、種池山荘は2450mなので標高差は1100m、約4時間の登りである。
 シラビソやコメツガの針葉樹林の中につけられた登山道は道幅も広く歩きやすい。開拓者のぬくもりと優しさを感じさせる道である。登るにつれて扇沢のバスターミナルがずっと下になり、そのはるか彼方に針ノ木岳の雪渓が見えてきた。標高約1750mにあるケルンの前でランチタイムをとる。


扇沢登山口
 霧がだんだん濃くなってきた。石畳を過ぎると傾斜が強まり、疲労も増してきた。一歩一歩がとても重い。やがて右側にお花畑が現れ花々の美しさに感嘆の声があがる。
エゾシオガマやヨツバシオガマ、チングルマが霧に濡れながらわれわれを出迎えてくれた。見上げると意外な近さに種池山荘が建っていた。
山荘の窓からあわただしい雲の流れの合間に、鹿島槍ヶ岳の双耳峰が大きな存在感を見せる。尾根のたわみに冷池山荘の灯りが見え、反対側の部屋からは大町の夜景が広がっていた。

夕暮れの鹿島槍ヶ岳双耳峰

8月4日(土)曇のち雨
昨夜は風と雨が強くお天気が心配されたが、朝起きると雨は止んでいた。
6時30分前に種池山荘を後にする。岩小屋沢岳や針ノ木峠は見えるのだが、針ノ木岳や蓮華岳は雲の中だ。

爺ヶ岳へ
爺ヶ岳の登りから振り返ると赤い屋根の種池山荘が見えた。三角点標のある爺ヶ岳中峰(2670m)に到着する。霧の山頂には誰もいない。われわれだけの山だった。
記念写真をとって冷池山荘にくだる。

爺ヶ岳山頂にて
冷池山荘で一休みしていよいよ鹿島槍ケ岳を目指して出発。山荘を出ると間もなく小さな地塘の横にキヌガサソウの群落があった。
どこまでも純白な花びらにしばし心を奪われる。布引山の登りもなかなか半端ではない。けれどコバルトブルーのイワキギョウや淡黄色のイワオウギの大群落の中を布引山に到着、風をよけた東の草地でランチタイム。

冷池山荘への登山道
雨風が強まってきた。雨具の上下をつけ岩片の積み重なる急斜面を登りはじめる。雨具のフードをたたく風の音と、顔に当たる雨の強さに3000m級の高さを感じる。
ひとかたまりのコマクサが咲いていた。ライチョウの親子が登山道を横切る。
岩の重なりの上に柱が立っている。鹿島槍ケ岳2889mの山頂だ。濃い霧で5mほどの視界しかない。なにも見えず、風の音だけが耳元を通り過ぎていく。
登頂成功、感激の握手、握手。みんな疲れなど、ひとかけらも感じさせない素晴らしい笑顔だ。
崩れやすい岩道を慎重にくだる。朝から7時間以上も行動しているのに、不思議に疲れはあまり感じない。3時前に冷池山荘に帰り着いた。
ラウンジでとりあえずは登頂成功を缶ビールで祝う。至福のひとときである。これでお天気がよければ・・・というのは、過ぎた望みというべきだろう。突然、土砂降りの雨が窓を叩く。もう何の心配もない。缶ビールの空き缶が目の前に並びはじめた。

鹿島槍ヶ岳山頂にて

8月5日(日)曇
今日は山荘から大谷原まで標高差約1300mの赤岩尾根を下降する。
冷乗越まで戻り赤い砕石の尾根に入る。はじめから足元が崩れた道で、注意を促すリーダーの声も真剣だ。
はるか下 に高千穂平が見えるが、そこまで降りてもまだ半分だ。もう少しで霧が晴れそうなのだが、なかなか鹿島槍ヶ岳が全貌を見せてくれない。
そんなもやもやした気持ちは高千穂平で完全に終わる。雲が低くたれこめてしまった。ここから樹林帯のくだりとなるが、傾斜も強まり濡れてすべる石と急な木段がつづく。
見通しのない樹林帯は暑さも厳しい。淡紅色のシモツケソウが疲れを癒してくれる。

赤岩尾根分岐付近
やっと大冷沢の瀬音が聞こえ、白い河原が見えてきた。西俣出合だ。堤防の中につけられたトンネルをくぐる。小さなのぞき窓の向こうを水が流れ、まるで裏見の滝のようだ。 林道に出て休憩。この3日間で初めて広くて平らな場所での休憩だ。林道にでて開放感が出てきたのだろう、賑やかな話し声と笑い声が交差する。出迎えのバスで「薬師の湯」に向かい3日間の疲れと汗を流す。もちろん生ビールであらためて乾杯だ。
パーテイの先頭に立ち、適切なピッチでリードをしてくれたサブリーダーの原田さん、全体をまとめ、全員登頂をもたらしてくれたチーフリーダーの中里さんに心から感謝、感謝。

赤岩尾根の終点西俣出合


(文:小林利秋・写真:中里宗弘、 3Dグラフィック:山田良雄)

キヌガサソウ


平成19年8月3日(金)〜5日(日) 参加者27名 CL 中里宗弘 SL 原田哲男
8月3日(金)
ポイント     到着時刻     出発時刻    所要時間
鶴瀬駅前      −       5:28      −
扇沢登山口  10:20     10:40      ―
ケルン    12:05     12:45    1:25
種池山荘   15:42        ―     2:57
                 (所要時間 4時間22分)
8月4日(土)
種池山荘      −       6:21      −
爺ヶ岳南峰   7:12        −     0:51
〃中峰    7:40      7:52    0:28 
冷乗越     8:53      8:56    1:01
冷池山荘    9:10      9:40    0:14
布引山    11:04     11:35    1:24
鹿島槍ヶ岳  12:40     13:00    1:05
布引山    13:40        −     0:40
冷池山荘   14:45        −     1:05
                 (所要時間 6時間48分)
 8月5日(日)
冷池山荘      −       5:45      −
冷乗越     6:00      6:10    0:15
高千穂平    7:38      7:50    1:28
西俣出合   10:50     11:00    3:00
大谷原    12:10        −     1:10
バス駐車場  12:20        −     0:10      
                  (所要時間 6時間03分)
                (総所要時間 17時間10分)