モンブラン登山旅行記
はじめに
6月の末から7月の初めまでカランクルン ヨーロッパアルプス遠征隊に参加し、モンブランに登ってきました。近年の海外登山では、昨年のパキスタン、中国 新疆ウイグル地区のトレッキングに引き続く第2弾です。(ああ〜癖になりそう!!)我々も天候状況から当初の縦走案を中止し、normal routeからの登頂を目指しました。
参加者  L TH、KH、YS
 
6月27日

17時、関西空港国際線出発ロビー(4F)、Hカウンター前集合
関空19:25〜(TG727)〜23:00バンコク`

定刻の1時間前には全員集合。
6月28日

〜バンコク00:30〜(TG970)〜
6:30 チューリッヒ着8:43 スイス国鉄、チューリッヒ空港駅〜12:00ブリーク〜BVZ駅12:23〜13:47ツエルマット着。ホテル.アンティカへ

雨模様のチューリッヒの町が美しい。列車は郊外に出てスピードを上げる。車窓に雨上がりのアルプの農村風景が広がる。
長いトンネルを抜け眼下に町が見えると、ブリークだ。堅牢な石造りのスイス国鉄の駅舎に対して、BVZ鉄道駅舎は昔の市電の駅のようだ。真っ赤な車両の内部は流石に立派だ。急傾斜はアプト式で登る。ツェルマットに行くにつれ天候は回復するが、マッターホルンは霧の中だ。教会近くのホテルに宿泊。
6月29日

7:20ツェルマット〜(徒歩0.20)〜ヴィンケルマッテン8:00〜(ロープウェイ)〜フーリ〜(ロープウェイ)〜トロッケナー・シュテーク〜(ロープウェイ)〜8:40クライン・マッターホルン駅(3884m)9:00…10:00コル…12:00ブライトホルン(4164m)…13.30クライン・マッターホルン駅〜(ロープウェイ)〜ツェルマット(ホテル泊)

隊長の「マッターホルンが見えてる」の言葉で目を覚ます。窓から眺めると素晴らしい快晴で、マッターホルンが黄金色に輝いている。
 今日は高度順応の為、ブライトホルン(4100m)に登ることにするが、3800mまでは3つのロープウエイを乗り継いでゆくだけだ。
 終点のクラインマッターホルンはその名の通り、槍ヶ岳のような岩峰で、岩をくり貫いてロープウエイの駅があり、トンネルやエレベーターで展望台や雪原に出られるようになっている。外に出るとロープトウの支柱が雪原を横切り、先にはイタリヤ側のピークが見える。天候も良いので気分は最高だ。雪原の真っ只中で登山準備に勤しむ。
 傾斜が出てくるあたりで、クレバス対策のためアンザイレンする。1箇所、明瞭なクレバスを渡って急な斜面を左上し、稜線上のやや広めのナイフリッジをしばらく行けば頂上だった。
頂上は風が強くて寒いので、少し手前の風が当たらないところでくつろぎ、4000mの高度に体を慣らす。
 今日は360度素晴らしい眺望で、モンブランや遠くベスビオス山(?)まで見えていた
6月30日

ツェルマット8:50〜(D902/1等車のみでパスでは差額必要)〜9:58フィスプ10:20〜(IR1716)〜11:05マルティニ11:35〜(R20)〜12:21Le Chatelard-Frontiere12:29〜(RE18920)〜13:06シャモニー

フランスのシャモニー迄の移動日だ。BVZ鉄道に乗り入れている、サンモリッツまで行く「氷河特急」は、屋根の半分がガラス窓になっており、山々の眺めが良いが(図3.)、フィスプでお別れだ。マルティニでスイス国鉄から乗り換えたマルティニ・シャトラル鉄道(MC)は、とてつもない急坂をアプト式でぐいぐいと登ってゆく。まるでケーブルカーだ!.
国境を過ぎたフランスのヴァロッシーヌでフランス国鉄シャモニー線に乗り換えるが、見てくれは同じような車両だ。
@シャモニーには昼過ぎに着いたが、ツーリストは生憎と昼休み。たまたま入ったホテルに運良く空室あり。ホテルに荷物を置いて、明日からの登山の準備。今日も天気でモンブラン、エギュー.デュ.ミディが誇らしげに天空に聳える。明日あの稜線に行くのだと思うと期待と不安が頭を擡げる。


7月1日

7:00シャモニー〜(taxi)〜7:20レ・ズーシュ8:00〜(ロープーウェイ)〜ベルヴュー8:40〜(登山電車0.20)〜9:00ニー・デーグル(2386m)9:30…11.00テート・ルース小屋(3167m)12:00…14:40グーテ小屋

7:00にタクシーを予約し、数日内に帰ると荷物をホテルに預ける。シャモニー南西のレ・ズーシュのロープウエイ乗り場は海抜約1000m。次第に車で登山者が集まってくる。ロープウエイは10分ほどで終点駅ベルヴユー(標高約1800m)に到着する。稜線を少し南に下るとトラムウエイ-登山電車-の乗り場があり、日本と違って連絡が悪い。それもそのはず、この電車は尾根の北西のサン・ジェルベ・レ・バンが始発で、延々8km山裾を巻き、ニ・デーグル(鷹の巣)と呼ばれる2370mの終点まで伸びているのだ。かなりの急傾斜をアプト式の路線で2両編制のミニ電車が運行されている。終点で電車は斜めのまま停車する。
 歩き始めは富士山登山路並みのガレ場だ。尾根を巻いて行くと、遠くにエギューデュミデイ針峰群がみえた。赤い頭といわれる、テト・ルーズ(3167m)に洒落た山小屋があった。巨大なオムレツで、やや早めのランチ。レタスサラダが久方ぶりの緑だ。今回の山旅では最高の料理だが、高度障害か?やや食欲がない。此処からはアンザイレンし、(落石予防のため)ヘルメットも着用だ。取り付きのクーロアールは落石の巣のため、小走りで落石の間隙を縫う命がけの横断である。その後は槍の穂先への登りのような急な岩稜(パイヨ稜)をひたすら登り、14:40グーテ小屋(3820m)に着いた。登山鉄道の終点から小屋までは、富士山5合目から頂上までの標高差にほぼ相当する。
小屋到着の頃より雲が湧き、風が強くなる。荷物室から本館の中に入ると40畳ほどの食堂になっていて、3、40人ほどの登山者が紅茶などを飲みながら寛いでいた。高所順応には、十分の水分を取り深呼吸する必要がある。この面でも談笑は有効だ。
7月2日

沈殿

2時にスタートするつもりでいたが、目が覚めると5時。今朝は風が強く、視界も無く誰もスタートせず。準備する人もなし。東洋人は我々3人だけとの情勢は変わらず。新たに上がってきた人が加わって、この日の宿泊者は昨日の倍くらい。高度障害は完全に過去のものとなった。

1時30分に起床。風は強いが星が瞬いている。「よし、いけるぞ!」ワクワクする。
 小屋の裏手の斜面をあがると尾根の末端に出る。行く手の雪の斜面にヘッドランプの灯りが点々と雪面に投影されている。風が猛烈に強い。小柄なSさんは飛ばされそうになり、取り敢えず小屋に戻り様子を見ることにした。6時に再度、気負いこんで出発。素晴らしい光景が広がるが、風は止まず、アタック中止を決定。
昨日と同様、小屋で一日を過ごす。昼頃帰ってきた3人連れ(ドイツ人?)に聞くと、(あの強風の中、女連れの3人で)「サミットまで登ってきた。しかし最後のナイフリッジは危険であった」という。あの天気のなかでもしっかりと登頂したものがいたと思うと、一層登頂意欲が沸く。しかし夕闇と共に降雪となり、絶望的な気分になってきた。

7月4日

6:45グーテ小屋〜ドーム・デュ・グーテ〜ドームのコル〜ヴァロ避難小屋〜10:55モンブラン頂上〜13:05グーテ小屋13:30〜16:35ニー・デーグル〜レ.ズーシュ(BUS)〜19:00シャモニー

目が覚めると4時。天候悪く、誰も出発しようとしない。外を見に行った隊長が「吹雪だ!」と諦めたように言う。前夜に(帰りの最終列車時刻表の都合で)6時以降の出発は不可能と理解していたので、最終日も登頂は無理だと観念する。それでも念のため6時頃様子を見に行くと、雲が晴れてきて今後の好天が確信された。

Sさんは「私は小屋に残る」と言うので、隊長、平井の2人で朝食もとらずに出発する。他のパーティは誰も出発しておらず、足首から脛のラッセルだ。風も強いが昨日ほどではない。ドームの登りにかかる頃に振り返ると、後続のパーティも登り始めたのが見えてきた。セラックの間にルートを取り、ドーム(4362m)のだだっ広い頂上。 ドームから少し下ったところがコル・ド・ドーム。いくつかのコブの先に頂上が見えた。遥かに遠い。しかしここまで来れば行くのみ!とお互いに無言で確認し、更に頂上を目指す。

傾斜が強まり、風も強くなる。手前のグランド・ボス(大コブ:4513m)とプテイ・ボス(小コブ:4547m)のピークを越えると、風のため稜線に積雪は殆どなく、アイゼンが雪面に小気味良く効く。 ルートは鋭く急なナイフリッジになり、強風でバランスを崩さないよう慎重に進む。風がますます強まり、慎重に通過したら頂上だった。(図8.)マッターホルンの頂上には十字架があるというが、此処には何もなく細いリッジ上でほとんどルートのようで落ち着かない。話には聞いていたが、気が抜けるほどの感慨のないピークであった。
 ドームの登り返しを過ぎると、後は基本的に下りのみで、満足感が湧いてくる。ドームの斜面は雪がすっかり腐って歩きにくい。小屋に帰着しSさんと合流。電車の最終時刻に合わせるべく下降を始める。入山時と異なり岩稜は一面の雪となっている。アイゼンをつけ,登行者の離合以外は殆ど休まずに下る。登って来るパーティーは極めて多い。

駅に着いたときはまさに電車が発車する瞬間であった。間一髪、飛び乗った登山電車には小綺麗な姿の観光客が溢れていて華やいでいるが、われわれは3日間風呂にも入らず汗をかき倒しているのではなはだ迷惑なことだろう。
ホテルに戻り、久しぶりにシャワーを浴びてレストランで祝杯をあげた。

シャモニー〜(Taxi)〜ジュネーブ8:44〜(IR519)〜12:20チューリッヒ空港14:30〜(TG971)〜

TAXIでジュネーブへ向かう。
約1時間で駅に到着。途中、スイスとの国境ではパスポートを見せるだけで通過。時間があればジュネーブの町もゆっくりと見たいのだが、そそくさと特急でチューリッヒへ。空港で土産を買い、機上の人となる。
7月6日

〜06:20バンコク09:15〜(TG728)〜15:05関空 解散

長い飛行機の旅も終わり、エコノミー症候群にもならずに良かった。
あとがき
アルプスの美しい山々、ツェルマットとシャモニーの綺麗で清潔な町そして個性的なスイス国鉄と登山鉄道の列車。愉快な仲間との、楽しくも厳しかった登山。またまた癖になりそうな楽しい旅行でした。

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